債務整理をするとブラックリストにのるのか?

代表弁護士 石川 智美 (いしかわ ともみ)

「債務整理をするとブラックリストにのるのか?」「ブラックリストにのるとどうなってしまうのか?」
…借金問題を抱えている人の多くが感じておられる不安です。

そこで,この記事では,よく耳にする「ブラックリスト」とはいったい何のことなのかを含めて,債務整理とブラックリストとの関係について,解説していきます。

ブラックリストとは

一般的に「ブラックリストにのる」といわれていることは,どのようなことなのでしょうか。
まず,「ブラックリスト」とよく言われますが,実際には,世の中に,そのような名前のリストが存在するというわけではないのです。

「ブラックリストにのる」と一般的に言われる状態は,「個人信用情報」に「異動情報」(「事故情報」)が登録されていることをいいます。

新たに借り入れの申込みを受けた金融機関は,申込者の支払い能力・信用力を審査するために,「個人信用情報」を確認します。これらの個人信用情報は,「信用情報機関」と呼ばれる機関が保管しています。
延滞などのマイナスの事情があると,この個人信用情報に,事故情報として登録されてしまいます。
このことが,「ブラックリストにのる」と言われる状態なのです。

金融機関は,新たな貸付けを行う際に,個人信用情報を確認しますから,ブラックリストにのっている人は,支払い能力に問題があると考えられてしまい,新たな借り入れ(住宅ローンや自動車ローンの契約,クレジットカードの作成など)の審査に通ることが非常に難しくなります。

「ブラックリストにのると借り入れができなくなる」と言われるのは,このためです。

信用情報機関の種類

個人信用情報を管理・提供する信用情報機関には,次のようなものがあります。

  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
  • 株式会社 シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)

それぞれの機関ごとに,登録される個人信用情報の種類や,登録期間などに違いがあります。もっとも,これらのうちのどれかひとつにだけでも事故情報が登録されていれば,通常新規の借り入れは難しいと考えられます。

債務整理をするとブラックリストにのるのか?

それでは,債務整理を行うとブラックリストにのるのでしょうか。
債務整理には,大きく分けて,「任意整理」,「個人再生」,「自己破産」の種類があります。
以下,種類ごとにブラックリストとの関係を具体的にみていきます。

任意整理の場合

任意整理とは,裁判所を通さずに,債権者と直接交渉を行う手続きです。
上であげたJICCでは,任意整理の事実が事故情報として登録されることになっています。登録される期間は,5年以内です。
その他の2つの機関では,任意整理を行ったこと自体は登録されるとはされていません。もっとも,任意整理を行う時点ですでに延滞があるような場合には,延滞の事実が登録されている可能性があります。また,保証会社による保証履行が行われた場合には、その事実が事故情報として登録されます。
したがって,通常,任意整理の場合,おおむね5年間は,ブラックリストにものといえます。

個人再生の場合

個人再生は,簡単にいうと,裁判所に申し立てて,金額を減らしてもらった借金を返済していく計画を立てる手続きです。
JICCでは,個人再生を行ったことが事故情報として登録されます。登録期間は,発生日から5年を超えない期間です。
KSCでは,官報情報が,個人信用情報に登録されます。個人再生を行うと,その旨が官報に掲載されますので,個人再生を行うと,KSCではブラックリストにのるといってよいでしょう。登録期間は,決定日から10年を超えない期間>です。
CICにおいては,任意整理の場合と同じように,個人再生を申し立てた事実が登録されることはないのですが,個人再生を行う状況になっている時点で,何等かの事故情報が登録されている状態である可能性は高いといえます。

自己破産の場合

JICCでは,自己破産を行ったことが事故情報として登録されます。登録期間は,5年間です。
自己破産を行った場合にも,個人再生と同じように官報に掲載されますので,KSCでも,個人再生の場合と同じように登録があります。期間も同じ10年間です。
CICにおいては,自己破産をして免責許可決定を受けたことが異動情報として登録されます。登録期間は, 5年間です。

債務整理をするとブラックリストにのる可能性が高い

以上,簡単にまとめますと,任意整理の場合は,5年間個人再生や自己破産の場合は,最長10年間,ブラックリストにのるということになります。

つまり,債務整理を行うと,基本的に,ブラックリストにのり新たな借り入れができない期間が生じることになるのです。
もっとも,一定期間,新たな借り入れができないということは,悪いことばかりではありません。強制的に借金をしない生活をすることで,債務整理後の生活の立て直しがしやすくなるということもあります。

また,ブラックリストには,永遠にのるわけではありません。この記事でご説明した期間を過ぎれば,削除されるのです。
ですから,過度にブラックリストにのることを心配して借金問題の解決を後回しにすることは得策ではないといえるでしょう。

債務整理は弁護士にご相談ください

ブラックリストにのるとどうなるのかなど,債務整理を行うに当たって不安に思われることがあれば,何でも弁護士にご相談ください。
弁護士にご相談,ご依頼いただければ,きちんとした説明とアドバイスを受けて,納得したうえで手続きを進めていくことができます。