再生計画の遂行が困難になった場合のハードシップ免責とは?

個人再生は,減額してもらった借金を原則3年間で返済するという再生計画を立て,計画を完遂することによって残りの債務を免除してもらう手続きです。
それでは,再生計画の途中で返済に行き詰ってしまったときはどうなるのでしょうか?

民事再生法は,このような場合の救済措置を用意しています。「再生計画の変更」「ハードシップ免責」です。

この記事では,ハードシップ免責について,その内容や要件をご紹介します。

個人再生で再生計画通りの返済ができないとどうなるのか?

個人再生を申し立てて,再生計画が認可されると,再生計画に沿った返済が始まります。

ところが,この返済が一度でも滞ってしまうと,債権者の申立てによって,再生計画が取り消されることがあるのです(民事再生法189条1項2号)。

再生計画が取り消されると,「再生計画によって変更された再生債権は,原状に復する」(民事再生法189条7項)ことになります。つまり,再生計画によって減額される前の借金に戻り,それまでの努力がすべて無駄になってしまうのです。

再生計画の遂行が難しくなった場合の対処法とは

もっとも,勤務先の倒産やリストラ,病気などの事情によって,返済が難しくなってしまった場合については,法律上の救済策が用意されています。

「再生計画の変更」と「ハードシップ免責」です。

再生計画の変更とは,やむを得ない事由で当初の再生計画を遂行することが著しく困難となった場合に,再生計画で定められた債務の期限を,2年を超えない期間延長することができるという制度です(民事再生法234条1項・244条)。再生計画の変更では,支払い期間を延長してもらえるだけで,債務の免除をしてもらえるわけではありません。

そこで,期間の延長によっても返済ができない場合には,ハードシップ免責を利用することが考えられます。

ハードシップ免責とは

ハードシップ免責は,すでに返済金額の4分の3以上を返済していた場合に限り,残りの借金の支払いを免除してもらうことができる制度です(民事再生法235条,244条)。

ハードシップ免責が認められるためには,次に示すような,厳しい要件を満たす必要があります。ハードシップ免責は,極めて例外的な救済措置であり,認められるケースは多くはありません。

  1. 債務者の責めに帰することができない事由によって再生計画を遂行することが極めて困難になったこと
  2. 再生計画の変更を行っても返済することが極めて困難な状態であること
  3. ハードシップ免責の決定を行う事が債権者一般の利益に反していないこと

以下,それぞれの要件について詳しく見ていきます。

①債務者の責めに帰することができない事由によって再生計画を遂行することが極めて困難になったこと

ハードシップ免責は,再生計画によって返済するはずだった債務を免除するという例外的な制度です。ですから,返済が難しくなった理由を再生債務者のコントロールの及ばないような事情に限定し,その上で,計画の遂行が「極めて」困難になったことが必要とされています。

先ほどご紹介したように,再生計画の変更は,再生計画の遂行が「著しく」困難になった場合に認められますが,「極めて」困難というのは,この場合よりもさらに困難の度合いが深刻な場合のことをいいます。

②再生計画の変更を行っても返済することが極めて困難な状態であること

再生計画の遂行が難しくなった場合であっても,まずは,再生計画の変更によって対処しなければならないこととされています。支払い期間を延長したとしても返済が極めて困難と言える場合でなければ,ハードシップ免責は認められないのです。

例えば,重い病気やけがで働くことができなくなった場合などです。

③ハードシップ免責の決定を行う事が債権者一般の利益に反していないこと

「債権者の一般の利益に反しない場合」とは,再生計画が認可された時点の「清算価値」(債務者が自己破産をしていれば債権者に配当されていたはずの金額)よりも多い金額をすでに返済している場合であることを意味します。

なお,個人再生における最低弁済額は,法律に定められた基準額よりも清算価値(その時点で持っている財産の評価額)の方が大きいときは,清算価値となります。認可された再生計画が,清算価値を弁済するという計画であった場合には,全額を返済しない限り,清算価値よりも多い金額を返済するということはできませんので,ハードシップ免責が認められることはないということになります。

再生計画通りに返済するのが難しくなった場合には弁護士にご相談ください

このように,再生計画の遂行が困難になった場合には,救済措置が利用できるケースがあります。もっとも,その要件は厳しく,認めてもらうのは容易ではありませんので,再生計画の変更やハードシップ免責を利用したい場合には,弁護士にご依頼いただくことをおすすめします。