住宅ローンが払えなくなった場合に行う任意売却とは?

代表弁護士 石川 智美 (いしかわ ともみ)

住宅ローンの返済ができなくなれば,マイホームを手放さなければならないことになります。
このとき,任意売却を行うと,競売にかけられるよりも高い代金で売却できたり,引っ越し費用が出たりと色々なメリットがあります。
ここでは,任意売却がどのようなものなのかについて,ご説明していきます。

住宅ローンが支払えないままでいるとマイホームはどうなるのか?

住宅ローンを滞納して,その期間が長引くと,債務者は,期限の利益を喪失し,金融機関は,住宅ローンの一括返済を求めることになります。
そして,一括で返済できなければ,担保となっている(抵当権が付いている)住宅を強制的に売却(これを「競売」といいます。)し,売却代金を住宅ローンの返済にあてるのです。

任意売却とは

このように,住宅が競売で売却されてしまう前に,市場取引において任意に売却する方法のことを「任意売却」といいます。通常,不動産を売却するためには,住宅ローンを全額返済して,抵当権を解除してもらわなければなりません。しかし,全額の返済ができない場合でも,債権者(抵当権者)の同意を得て,抵当権を外してもらうことによって,任意売却が可能になります。後でご説明するように,任意売却は競売より債権者にとってもメリットがありますので,債権者が協力してくれる場合があるのです。

任意売却の流れ

まず,不動産会社に不動産の価格を査定してもらい,その上で債権者と交渉を行います。
不動産の売却先が決まったら,債権者の同意を得て,売買契約を締結します。住宅にまだ済んでいる場合には,任意売却終了前に引っ越しを済まします。売買代金は,債権者に分配されます。

任意売却のメリット

競売よりも高い金額で売却できる

強制的に売却される競売の売却価格は,市場価格の7割前後になる場合が多いといわれています。
しかし,任意売却は,通常の不動産取引と同じように売却する方法ですので,競売の場合より市場価格に近い価格で売却することが可能となります。
高い金額で売れれば,任意売却後に残る借金を減らすことができます。
このように,競売よりも高い金額で売却できることは,債権者にとってもメリットとなります。そのため,債権者は,任意整理に協力してくれるのです。

残った住宅ローンの返済方法を相談できる

任意売却の場合,売却後に残ってしまった住宅ローンの返済方法は,債権者と相談をして決めていきます。債権者は,債務者の状況をわかっていますので,月々に無理のない金額での分割払いに応じてもらえることも十分にあります。
なお,後でも触れるように,場合によっては,自己破産を選択して残債を免除してもらう方法をとることもあります。

引っ越し費用を出してもらえる可能性がある

任意売却の場合,債権者と交渉することで,場合によっては,不動産の売却代金から,引っ越し費用を出してもらえることがあります。
競売になると,誰も引っ越し費用を出してくれませんので,この点は任意売却の大きなメリットであるといえます。

自己破産と任意売却

先ほどご説明したように,任意売却の場合,残ったローンは,無理のない金額での分割払いにしてもらえることがありますが,金額が大きいと,完済までにかなりの期間がかかってしまいます。

そのような場合には,自己破産を申し立てることをおすすめすることがあります。
自己破産では,借金を免除してもえますので,借金がゼロの状態から生活を再建することができます。
自己破産のデメリットとして,財産を手放さなければならないことがありますが,不動産を手放す選択をしている以上,この点が大きなデメリットとならないことも多いでしょう。

任意売却だけで良いのか,自己破産を申し立てるべきなのか,自己破産を申し立てられない事情はないのかなどは,個々のケースによって違ってきますので,弁護士に詳しい事情をご相談のうえアドバイスを受けていただくことをおすすめいたします。

住宅ローンの返済に困ったら弁護士にご相談ください

このように,任意売却にはメリットがありますが,利用には,タイムリミットがあります。早く債務整理の検討を始めた方が,選択肢の幅は広がります。

また,自己破産や個人再生など,他の債務整理を行った方が得策であるというケースもありますが,その判断には,専門的な知識が必要となります。
ですから,様々な状況から住宅ローンの返済が難しくなってきた場合には,お早めに弁護士にご相談ください。