個人再生が利用できないケースとは?

代表弁護士 石川 智美 (いしかわ ともみ)

個人再生は,自宅を手元に残したまま借金を大幅に減額することができる魅力的な手続きです。
しかし,個人再生には,手続開始のためにも,再生計画認可のためにも,満たさなければならない条件が多くあります。
ですから,個人再生の失敗を避けるためには,必要な条件についての正確な知識が必要となります。
そこで,この記事では,個人再生ができないケースについて,ご説明します。

個人再生手続き開始の条件を満たさない場合

個人再生手続き開始申立て自体が認められない場合について,ご紹介します。
まず,次のような場合には,民事再生手続開始の申立ては,棄却されます(民事再生法25条)

  1. 再生手続の費用の予納がないとき。
  2. 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し,その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
  3. 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
  4. 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき。

また,さらに,個人再生の手続開始要件には,次のようなものもあります。

  • 債務者に継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること
  • 再生債権額が5000万円を超えていないこと

再生計画が不認可となる場合について

個人再生は,裁判所によって再生計画を認可してもらい,その計画に沿って返済を行うことで,借金の一部を免除してもらう手続きです。ですから,裁判所の認可がおりなければ,個人再生は失敗に終わるということになります。

個人再生における再生計画を裁判所に認可してもらうためには,上でご説明した再生手続開始の要件とは別に,再生計画認可の要件が必要となります。

小規模個人再生と給与所得者等再生の両方に共通する主な要件は,次のとおりです(民事再生法174条,231条)。

  • 再生手続又は再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
  • 再生計画遂行の見込みがあること
  • 再生債権額が5000万円を超えないこと
  • 再生計画に基づく弁済額が最低弁済額を下回っていないこと
  • 再生債権者の一般の利益に反しないこと(※清算価値保障の原則に反していないこと)

※清算価値保障の原則とは,自己破産であれば債務の弁済にあてられるはずの金額よりも多い金額を返済しなければならないという原則です。
また,小規模個人再生の場合は,次のような要件が必要です。

  • 再生計画案が債権者に可決されたこと
  • 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること

住宅資金特別条項を定めた場合の認可要件

個人再生においては,住宅資金特別条項(住宅ローン特則と呼ばれます。)を定めることで,自宅を手元に残したまま手続きができる場合があります。
住宅ローン特則を定める場合には,さらに,以下のような要件(主なものを挙げます。)が必要となります。

  • 住宅ローン特則の対象となる債権が自宅の購入代金やリフォーム代金のための貸付けであること
  • 住宅資金貸付債権が法定代位により取得されたものでないこと
  • 対象となる住宅に住宅ローン関係の抵当権以外の担保が設定されていないこと
  • 対象となる住宅以外の不動産にも住宅ローン関係の抵当権が設定されている場合には,その住宅以外の不動産に後順位抵当権者がいないこと
  • 住宅や住宅の敷地を使用する権利を失う見込みがないこと

個人再生ができないケースの典型例

このように,個人再生には,様々な要件がありますが,個人再生ができない典型的な場合は,例えば,以下のようなケースです。

  • 継続的な収入の確保ができない場合
  • 収入と支出からみて借金を減額したとしても返済していくのが難しい場合
  • 住宅ローン以外の借金の総額が5000万円を超えている場合

債務整理は弁護士にご相談ください

以上のように,個人再生にはいろいろな条件があり,どれかが欠けると失敗してしまうことになります。
そのため,個人再生を申し立てる場合には,条件がそろっているかをきちんと確認しなければなりませんが,この記事を読んでいただいてもわかるように,手続きを十分に理解するためには,法的な知識が不可欠です。

また,そもそも,債務整理には,個人再生以外にも種類がありますので,どの手続きを選択することが適切なのかについては,弁護士にご相談いただいてご判断いただくことをおすすめしています。場合によっては,無理をして困難な個人再生を選択する必要がないこともあるのです。

ですから,借金でお悩みの場合には,ぜひお早めに弁護士にご相談いただければと思います。