自己破産が家族に与える影響とは?

代表弁護士 石川 智美 (いしかわ ともみ)

自己破産を検討されている方にとって,自己破産が家族にどのような影響を与えてしまうのか?ということは,とても心配されることです。
まず結論をお伝えすると,基本的に,自己破産自体は家族に対して影響を与えません。

もっとも,ご家族も注意しなければならない点はいくつかあります。

ここでは,自己破産が家族に与える影響について,詳しくご説明していきます。

自己破産の効果は家族には及ばない

自己破産とは,持っている財産を処分して債権者に分配し,残りの借金を免除してもらうための手続きです。

この手続きの効果自体は,自己破産を申し立てた本人だけに及び,家族には直接の影響を与えません。
ですから,家族の財産まで処分されてしまうなどということはありませんし,自己破産に伴う職業制限などの各種制限も,家族には一切生じません。

間接的な影響はあり得る

もっとも,自己破産をした人と密接な関係にある家族には,間接的な影響が及ぶ可能性はあります。例えば,次のようなものです。

不動産などの財産が処分されることによる影響

不動産や自動車(一定額以下の場合は別)などの財産を所有している人が自己破産をした場合,それらの財産は,お金に換えたうえで各債権者に分配されることになります。

つまり,マイホームなども手放さなければならないことになるのです。

これまで家族で生活していた自宅を出て行かなければならなくなり,引っ越しが必要になったり,場合によっては転校を伴ったりすることもあるわけですので,この点では,家族にも影響が出ると言わざるを得ません。

自動車を処分しなければならないことによって,自動車での移動ができなくなるなどの影響も出ることがあります。

ブラックリストにのることによる影響

自己破産をすると,いわゆる「ブラックリストにのる」という状態になります。
新たな借り入れの申込みをした際に金融機関がチェックする個人信用情報に事故情報として登録されてしまうのです。

そのため,自己破産をすると,手続きを行った本人は,約10年の間,新しくクレジットカードを作ったりローンを組んだり連帯保証人になったりすることができなくなってしまいます。

家族までブラックリストにのるわけではありませんので,家族が家族名義で借り入れをすることはもちろん可能ですが,自己破産をしたのが一家の大黒柱である場合には,この点の影響もあるといえます。

保証人・連帯債務者になっている場合

これまでご説明したように,自己破産の影響は,直接家族には及びません。

借金の返済義務についても,借りた本人以外には生じませんので,本人が返せなくなったからといって,家族が返さなければならなくなるといったことは一切ありません。

しかし,家族が保証人(連帯保証人)や連帯債務者になっている借金がある場合には,その家族への間接的な影響は小さくありません。
自己破産をする人は,免責許可を得ることによって借金を免除されることになりますが,保証人や連帯債務者の返済義務は,そのままでは免除されることはありません。

そのうえ,自己破産をするような場合には,すでに期限の利益を失っているのが通常ですので,保証人に対する請求は,分割ではなく一括請求になってしまいます。
ですから,家族も返済が難しいというような場合には,その家族も同時に自己破産を申し立てて,家族自身の返済義務を免除してもらっておいた方がよいことが多いでしょう。

家族への名義変更などは否認権行使の対象になることがある

自己破産をする人が,自分の財産を,自己破産する前に,家族に移してしまうというようなケースでは,家族に影響が生じることもあります。
このような行為は,債権者を害する行為ですので,破産管財人が,否認権を行使して,家族に対して,その財産の返還を求めることがあるのです。
借金の返済が難しくなった場合に,自分の財産を家族に移してしまうというような行為はしないように注意する必要があります。

自己破産をする場合家族への説明や協力が必要

このように,自己破産は,間接的には,家族に影響を与えることがあります。
ですから,ケースにはよりますが,自己破産を行う場合には,できれば,家族に十分に説明をして,家族の協力を得ることをおすすめします。
自己破産後の生活再建にとっても,家族の協力は非常に重要であるといえますので,その意味でも,自己破産のことを家族にきちんと伝えることにはメリットがあります。

家族への影響を最小限にするために他の債務整理を選択するケースもある

債務整理には,自己破産以外にも,任意整理や個人再生があります。

任意整理や個人再生の場合には,マイホームを手放さなくて済むことがあります。
任意整理であれば,家族が保証人になっている借金だけを整理の対象から外すということも可能です。

財産や借金の額など,状況にはよりますが,場合によっては,自己破産以外の債務整理を選択することによって家族への影響を小さくできることもありますので,まずは,何が適切なのか,弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

自己破産は弁護士にご相談ください

自己破産をすることによる家族への影響をご説明してきました。

家族に影響を与えてしまうことを心配して債務整理に踏み切ることができないような方がいらっしゃいましたら,まずは,当事務所へご相談ください。

具体的なご相談者の事情に基づいて,家族にどのような影響があるのか,どのようにすればそれを避けることができるのかなどについて,適切なアドバイスをさせていただきます。