「保証人」と「連帯保証人」は何が違うのか?
「保証人」という言葉は,多くの方がご存知だと思います。
しかし,「保証人」には,単なる「保証人」と「連帯保証人」という種類があることやそれぞれの特徴を正確にご存知の方は少ないかもしれません。
これらの意味をよく知らずに保証人になってしまうことはとても危険です。
そこで,ここでは「保証人」と「連帯保証人」の違いについて,解説していきます。
また,債務整理をする場合に,保証人にどのような影響が出るのかについても,あわせてご説明します。
保証人とは
「保証人」とは,借金をした人(「主債務者」)が借金の返済をしない場合に,主債務者に代わって支払いをする義務を負う人のことをいいます。連帯保証人と区別するために,「単純保証人」と呼ばれることもあります。
債権者との間で保証契約を締結することで,保証人となります。
保証人には,後でご説明する連帯保証人とは異なり,「催告の抗弁権」・「検索の抗弁権」・「分別の利益」が認められています。
以下,それぞれの内容を見ていきましょう。
まず,「催告の抗弁権」とは,債権者から借金返済の請求を受けた場合に,「まずは主債務者に請求してください。」と求めることができる権利です(民法452条)。
次に,「検索の抗弁権」とは,主債務者に容易に強制執行できる資産があることを知っている場合に,「まずは主債務者の財産から取り立てしてください。」と主張することができる権利です(民法453条)。
また,「分別の利益」とは,保証人が複数いる場合(共同保証)に,「借金全額ではなく保証人の頭数で割った金額だけしか支払いません」と主張することができることをいいます(民法456条,427条)。
連帯保証人とは
一方,「連帯保証人」には,上でご説明した「催告の抗弁」・「検索の抗弁」がありません(民法454条)。
まず主債務者から回収するようにと主張することはできませんし,主債務者に財産があるかどうかにかかわらず,債権者が保証人に対して支払を求めることができます。
また,連帯保証人には,「分別の利益」はありません。連帯保証人が複数いる場合,債権者は,どの連帯保証人に対しても借金全額を支払うようにと請求することができるのです。また,複数の連帯保証人のうちの1人に対して請求すると,他の連帯保証人に対して請求したものとみなされます(民法458条,434条)。
このように,連帯保証人は,単なる保証人よりも厳しい立場に置かれているのです。
保証人と連帯保証人の違いをよく知らずに連帯保証人欄に署名捺印をしてしまい,思いがけず重い責任を負ってしまったという人も少なくありませんので,きちんとした知識を持っておくことが大切です。
債務整理が保証人や連帯保証人に与える影響とは
保証人や連帯保証人が付いている借金の主債務者が債務整理をした場合,債権者は,保証人(連帯保証人)に対して借金の返済を求めることになります。
主債務者が自己破産をした借金が免除されたり,個人再生をして借金の金額が減縮したりしても,保証人は,自分自身が債務整理をしない限り,借金残高全額の返済義務を負うのです。
ですから,保証人が付いている借金の債務整理を行う場合,保証人に迷惑をかけることになりますので,事前に保証人に相談しておいた方がよいでしょう。
保証人自身も債務整理の手続きをとれば,借金全額の返済義務を免れることができます。
任意整理や特定調停の場合,保証人に影響を与えずに済むこともある
債務整理の中でも,任意整理や特定調停の手続きの場合,債務整理の対象とする借金を自分で自由に選択することができます。
保証人付きの借金を債務整理の対象から外し,その借金だけは,全額を自分で返済し続けることで,保証人に迷惑をかけずに済ませることが可能となります。
なお,自己破産や個人再生では,全ての債権者を平等に扱わなければならず,特定の借金だけを手続きの対象から外すことは認められていませんので,任意整理の場合のような方法によって保証人への影響を避けることはできません。
債務整理は弁護士にご相談ください
保証人の立場での債務整理
人から頼まれて,よく意味がわかないままでも,署名捺印をしてしまえば,通常,保証人(連帯保証人)としての責任を負います。
連帯保証人の場合,保証人とはいっても,借金をした人と同じように,借金返済の義務を負ってしまいます。単なる保証人でも,主債務者が借金を返せなくなったような場合などには,同じく返済の責任を負います。
返済が難しい場合には,保証人の立場でも,債務整理を行うことができます。
債権者からいきなり多額の請求を受けて困ったなど,返済に悩まれた場合には,まずは弁護士にご相談ください。
保証人がいる場合の債務整理
自分が主債務者で,保証人が付いている借金がある場合,主債務者に迷惑をかけてしまうケースがあります。
保証人のことを頭に入れずに債務整理をしてしまうのはトラブルのもとです。事前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。