債務整理を弁護士に依頼すると督促が止まる?取立てを止める受任通知とは?

代表弁護士 石川 智美 (いしかわ ともみ)

借金の返済を滞納してしまうと,債権者からの取り立てがあります。この取立ては,とても大きな精神的負担になることが多いです。また,頻繁な連絡などによって,家族に心配をかけてしまうケースもあります。

このような督促を止める方法があるのをご存知でしょうか?

今回は,厳しい督促を止める方法について,解説していきます。

弁護士に依頼すると督促が止まる

消費者金融からの借金やカードローンなど,借金の返済が滞ってしまうと,債権者から,電話や郵便などによって頻繁な督促を受けることがあります。
この督促ですが,実は,弁護士に債務整理を依頼すると,すぐに一旦止めることができるのです。

なぜ督促が止まるのか?

それでは,なぜ,弁護士に依頼することで督促を止められるのでしょうか?
これは,「受任通知」と呼ばれるものの効果です。

「受任通知」とは,「債務整理」(借金の整理をする手続きの総称です。)の依頼を受けた弁護士などの専門家が,依頼を受けたことを債権者に通知する書面のことをいいます。同時に,取引履歴の開示なども求めることが多いです。

貸金業法21条1項9号は,以下の行為を禁止しています。

「債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。」

つまり,受任通知を受けたあとは,電話やFAX,訪問などによって取立てを行うことはできないのです。

また,債権回収会社( サービサー)についても,サービサー法により,受任通知送付後の取立てが禁止されています。

これに反して取立てを行った場合には,刑罰を科されたり,行政処分を受けたりすることがあります。

ほとんどの債権者は,このようなルールを守り,受任通知を受けてからも取立てを行うということはしません。
したがって,弁護士に依頼すると督促が止まる,といえるのです。

当事務所では,基本的に,ご依頼をいただいた当日か,その翌日には,受任通知を発送しています。ですから,ご依頼いただければ,通常,債権者からの取り立てはすぐにストップします。

なお,受任通知を受け取った後も,訴訟を提起して債権の回収を図ることを禁止されていませんので,直接の取立てが止まったからといって,裁判を起こされることがないとは限りません。また,受任通知が送付されても,すでに手続きが進んでいる強制執行の手続きは止まりません。

また,貸金業法の規定は,「貸金業を営む者」に対する規制ですので,個人の債権者などについては,受任通知後の取り立て行為が禁止されているわけではありません。具体的には,弁護士にご相談ください。

受任通知の注意点

ブラックリストにのる可能性がある

「ブラックリストにのる」という言葉を聞かれたことがある方も多いと思います。信用情報機関が保有する個人信用情報に,事故情報が登録されることです。
債務整理の受任通知を送付すると,個人信用情報に登録されてしまう可能性が高いです。金融機関は,貸付けの審査の際に,個人信用情報を確認しますので,ブラックリストにのると,数年間(一般には5年から10年)の間,新たな借り入れなどができなくなります。

保証人に対して請求がいく場合がある

受任通知を送ると,返済も一旦ストップすることになります。そうすると,保証人がついている債務の場合には,金融機関が保証人の方に請求を行うことがあります。

受任通知の督促禁止の効力は,保証人には及びません。

そのため,保証人がついている借金がある場合には,弁護士に相談し,保証人の点をどのようにするかを考えておく必要があります。

口座が凍結されることがある

受任通知が送られると,借金のある銀行の口座は「凍結」されることになります。つまり,その口座に残っているお金が借金の返済にあてられてしまったり,お金の引き出しができなくなってしまったりするのです。

そのため,受任通知を送付する前に,あらかじめ,全額引き出しておいたり,給与振込先の口座を変更しておいたり,光熱費や携帯料金などの引き落とし口座を変更したりといった準備をしておく必要があります。

競売や自動車の引き揚げを招くことがある

準備不足のまま口座が凍結されてしまうと,思いがけない問題が起きることもありますので,事前に弁護士の説明を受け,きちんと対応するようにご注意ください。

借金問題でお悩みの方は弁護士にご相談ください

以上のように,弁護士が受任通知を発送すると,金融機関からの取立ては止まり,しばらくの間返済の必要もなくなります。
借金でお悩みの方にとって,厳しい取立ては非常に負担になっているものですから,この点は,弁護士にご依頼いただくことの非常に大きなメリットであると思います。
借金の支払いが難しくなったなどのお悩みを抱えた場合には,お早めに弁護士にご相談ください。