過払い金返還請求権は10年で時効?相談を急ぐべき理由とは?
過払い金返還請求は,法律に定められた利息を超えて支払い過ぎていた利息を取り戻すものです。この過払い金について,「相談を急いだほうがよい」などと聞かれたことがある方も多いのでのではないでしょうか?
実は,過払い金返還請求権は,ある時点から一定の期間を経過すると,時効によって消滅してしまうことがあるのです。
過払い金が発生するような金利での取引が多数行われていたのは,今から10年以上前になります。ですから,過払い金が時効によって取り戻せなくなるケースが増えています。
消滅時効が成立してしまうと,取り戻せたはずの過払い金を取り戻すことができなくなってしいますので,できるだけ早い対処が必要です。
この記事では,過払い金返還請求の時効について,詳しくご説明していきます。
過払い金返還請求権の消滅時効とは
過払い金返還請求権は,法律上,「不当利得返還請求権」(民法703条,704条)というものになります。不当利得返還請求権は,10年で時効によって消滅します(民法167条)から,過払い金返還請求権は,10年で時効消滅するということになります。
また,消滅時効は,「権利を行使することができる時」から進行します(民法167条1項)。
そして,過払い金は,厳密には,返済する度に発生することになりますので,それぞれの過払い金返還請求の場合,判例は,「取引の終了時」を消滅時効の起算点とする考え方をとっています。また,取引の終了時については,「完済したとき」とされる場合が多いです。
つまり,過払い金返還請求権は,完済したときから10年を経過すると時効によって消滅し,返してもらうことができなくなるということになります。
「一連」と「分断」について
ここで,問題となるのが,同じ貸金業者から,一度完済した後にもう一度借り入れを行った場合に,複数の取引を1つのものとして扱う(「一連」計算などといわれます。)のか,それぞれ別個の取引として扱う(「分断」などといわれます。)のかです。
「一連」として扱われた場合には,何度か完済していても,最終的な完済の時点が時効の起算点となります。
これに対して,「分断」として扱われた場合には,それぞれの完済日が時効の起算点となってしまいますので,最後の完済日からはまだ10年経過していなかったとしても,それ以前の完済日が10年以上前であれば,それまでの過払い金については,消滅時効にかかって請求できないということになるのです。
また,一連計算をした方が,過払い金の金額は大きくなります。
ですから,「一連」と扱われるか「分断」と扱われるかによって,請求できる過払い金の額が大きく変わってくることがあるのです。
ところが,「一連」なのか「分断」なのかを判断することは,容易ではありません。貸金業者との間で争いになることは多く,裁判例もたくさんあります。その判断においては,例えば,前後の取引の間のブランク期間の長さ,基本契約書の有無,それぞれの契約の内容など,様々な事情が考慮されます。一連計算を認めさせるためには,十分な法的知識や裁判例の研究が必要となりますので,弁護士にご相談いただくのが得策といえます。
消滅時効を中断するためには
時効には,「中断」という制度があります。法律に定められた時効を中断する事由があると,進行が中断し,その時点から,時効期間のカウントが0から再スタートするのです。過払い金のことを考え始めたときにすでに期限が迫っているというような場合には,すぐに時効を中断させるために措置をとらなければなりません。
過払い金返還請求の時効を中断するためには,裁判上の請求(民事訴訟の提起,支払督促の申立て,民事調停の申立て)が必要となります。
なお,内容証明郵便を貸金業者に送付するなどといった裁判以外での請求(「催告」と呼ばれます。)を行うと,時効は中断しませんが,6ヶ月間,時効期間が延長されます。この6カ月の間に,裁判上の請求を行うことで,消滅時効の成立を防ぐことができます。
過払い金返還請求はできるだけ早く弁護士にご相談ください
このように,過払い金返還請求権は,通常,完済から10年経つと消滅してしまいます。
期限が近付いている場合には,できるだけ早く時効中断の措置をとることが必要となります。
また,完済から10年以上経過していても,後の取引と一連の取引として扱うことで,時効にかかっていないという主張が認められるケースもありますが,この主張を認めさせるためには,専門的な知識が必須です。
取り戻せるはずの過払い金が取り戻せなくなるのは,非常にもったいない話です。
ですから,手遅れになる前に,ぜひ弁護士にご相談ください。