個人再生手続きの流れと確定後の注意点について
個人再生は,借金を大幅に減額してもらい,3年間(場合によっては5年間)の分割払いによって返済するといった計画を立てる債務整理の手続きです。裁判所に申し立てる必要があります。
個人再生の手続きは,特に住宅を手放したくない人などにとって非常にメリットのある手続きですが,その内容は債務整理の中でも特に複雑です。
ここでは,個人再生手続きの中で通常利用される小規模個人再生手続きについて,手続きの流れの概略と,手続き後の注意点について,ご説明していきます。
個人再生の手続の種類
個人再生手続きを利用するための条件は以下のとおりです。
- 借金などの総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
- 将来にわたり継続的な収入があること
個人再生手続きの流れ
個人再生の手続きの流れを,ご紹介します。
各裁判所により異なる場合もありますので,以下は,あくまでも目安となります。
全体でかかる期間は,最低でも6カ月程度です。
① 弁護士への相談,委任契約の締結
個人再生は,複雑な手続きです。準備しなければならない書類も多くあります。そのため,弁護士に依頼することなく,一般の方本人が自分で手続を進めていくことは,非常に困難です。ですから,まずは弁護士に相談し,依頼することが必要となります。
② 弁護士が受任通知を各債権者へ送付する
弁護士は,依頼を受けると,受任通知を送付します。これにより,債権者からの取立てが止まります。
③ 取引履歴の開示,引き直し計算
受任通知を受けた債権者から取引履歴の開示があったら,利息制限法に基づいた引き直し計算を行います。
④ 申立書類の準備
個人再生の方針が固まると,申立て準備を進めていきます。
⑤ 個人再生の申立てをする
裁判所に対して,申立てを行います。
⑥ 場合によっては,個人再生委員が選任される
個人再生手続きを指導・監督する「個人再生委員」が,裁判所によって選任されることがあります。弁護士が申立人の代理人についている場合には個人再生委員を選任しないという運用をしている裁判所もありますし、全件で個人再生委員を選任する裁判所もあります。。個人再生委員が選任される場合には,裁判所へ納める予納金の額が増えます。
⑦ 個人再生の開始決定
申立てに問題がなければ,裁判所が開始決定を出します。
裁判所によっては,この前に,裁判所や個人再生委員による面接が行われる場合もあります。
⑧ 債権調査手続き
債権額を確定するための手続きです。まず,債権者による債権届出が行われ,次に,債務者の異議申述期間が設けられます。これに対して債権者が反対する場合は,最終的に裁判所が債権の評価を決定します。
⑨ 再生計画案の提出
個人再生の認可決定の後,毎月いくらずつ返済していくのかについて,計画書を提出します。
⑩ 再生計画案の決議など(小規模個人再生の場合)
債権者に同意するかどうかについて回答を求めます。同意しない債権者が,総数の半数未満かつ債権額総額の2分の1以下である場合には,再生計画案が可決されたものとみなされます。
⑪ 再生計画の認可
裁判所が再生計画の認可の可否について判断します。
⑫ 再生計画の内容に沿って,債務の弁済を開始
認可決定が確定すると,再生計画に沿った返済が始まります。
認可決定後の注意点
再生計画の認可が下りた後は,原則として3年間,計画に沿った返済を続けていくことになります。
きちんと返済を終えることができると,残りの借金が免除されます。
しかし,もし,返済が遅れたり,返済ができなくなってしまったりすると,再生計画が取り消される可能性があるのです。再生計画が取り消されると,減額された借金はもとに戻ってしまいますので,債務整理をやり直さなければなりません。
なお,再生計画の遂行が難しくなった場合の制度として,「再生計画の変更」や「ハードシップ免責」もあります。
返済計画を守れないような状況になった場合には,出来るだけ早く弁護士に相談し,対策をとるようにしましょう。
個人再生は弁護士にご相談ください
個人再生は,このような流れで進みます。終了までの期間も短くありませんし,複雑な手続きを裁判所が定めた期間内に間違いなく行うことが必要となります。期限内の
手続きができない場合には,全てが無駄になる場合もあります。スムーズに手続きを進めるためには,十分な法的知識が必須となるのです。ですから,個人再生は,専門家である弁護士のサポートを受けて申し立てることを強くおすすめします。
また,認可決定後についても,返済ができなくなりそうな場合などには,ぜひすぐに弁護士にご相談ください。