債務整理にはどのくらいの期間がかかるのか?

代表弁護士 石川 智美 (いしかわ ともみ)

債務整理を検討されている方にとって,「どれくらいの期間がかかるのか?」というような重要な問題だと思います。
債務整理にはいくつかの種類があり,それぞれによってかかる期間も違ってきます。

ここでは,債務整理の種類ごとに,手続きの流れやかかる期間をご説明していきます。

債務整理の種類ごとにかかる期間は異なる

債務整理には,大きく分けて,任意整理,特定調停,個人再生,自己破産という種類があります。
これらのうち,どの手続きを選択するかによって,かかる期間は異なってきます。

以下,手続きごとに,期間の目安をご紹介します。

任意整理

任意整理とは,裁判所を介すことなく,債権者と直接交渉を行って,借金の総額や現在の支払い方法を変更し,改めて合意をし直す債務整理の方法のことをいいます。
任意整理に必要な期間の目安は,2カ月~6か月程度といわれています。債権者の数や対応によっても期間は異なってきますので,場合によっては,この目安から大きく外れる可能性もあります。
おおまかな手続きの流れは,次のようなものです。

  1. 弁護士から各債権者への受任通知の送付
  2. 取引履歴の開示・引き直し計算
  3. 各債権者へ和解案の提示と交渉

なお,過払い金返還請求をする必要があれば,場合によっては,裁判に発展してさらに長い期間かかってしまうこともあります。
また,任意整理は,借金をゼロにする手続きではなく,和解成立後に返済が始まります。通常3年から5年程度で完済することになるでしょう。

特定調停

特定調停は,裁判所に対して調停を申し立てて,任意整理と同じようなことについて,裁判所を介して債権者と話し合いして新たな合意を目指す手続です。
基本的に,裁判所が決めたスケジュールで進んでいきます。裁判所における調停期日は,通常,1カ月程度の間隔があきます。かかる期間の目安は,4カ月~5ヶ月程度です。任意整理の場合と同じように,終了後は,3年~5年間程度の期間で,完済します。
特定調停の手続きの大まかな流れは,次のようなものです。

  1. 裁判所への申立て
  2. 調停期日(2回~)
  3. 調停成立 

個人再生

個人再生は,裁判所に対して申し立てて,借金総額を減額してもらい,原則3年間の分割払いで返済していくという内容の再生計画を立てる手続です。
手続きにかかる期間は,事案の複雑性などによりかなり異なってきますが,申し立てから,5カ月~8カ月程度のことが多いようです。個人再生は,おおむね次のような流れで進められます。

  1. 各債権者への受任通知の送付
  2. 取引履歴の開示,引き直し計算
  3. 地方裁判所に対する個人再生の申立て
  4. 個人再生委員の選任(ない場合もあります)
  5. 個人再生の開始決定
  6. 債権者からの債権の届け出
  7. 再生計画案の提出
  8. 再生計画の認可の決定

自己破産

自己破産とは,借金を返済することができない状態になった人が,裁判所に申し立てて,自分の財産を処分して借金の返済に充てることを条件に残りの借金を免除してもらう手続をいいます。

また,自己破産には,「同時廃止」と「管財事件」という2種類の手続きがあります。「同時廃止」は,借金の返済に充てられるような財産がほとんどない場合や,借金の理由にも特段問題がないような場合などに選択される手続きです。

一定程度以上の財産があったり,借金の理由に問題があったりするような場合には,「管財事件」となります。なお,各裁判所によっても異なりますが,通常,管財事件には,さらに,「少額管財」と「通常管財」があります。少額管財事件では,裁判所に納める予納金の金額が,少額になります。少額管財事件は,弁護士が申立人になっている場合のみとしている裁判所もあるようです。

同時廃止事件と管財事件では,手続きの流れや期間が大きく異なります。同時廃止の場合には,以下でご紹介する流れのうち,⑦から⑨のは行われません。

同時廃止事件の場合,全体の期間は,3か月~6カ月程度となることが多いようです。

管財事件では,事案の複雑性などにより様々ですが,半年~1年程度はかかることが多いでしょう。

自己破産の手続きの大まかな流れを,以下にご紹介します。

  1. 各債権者への受任通知の送付
  2. 取引履歴の開示,引き直し計算
  3. 地方裁判所に対する自己破産の申立て
  4. 破産審尋(ない場合もある)
  5. 破産手続開始決定
  6. 管財人選任
  7. 管財人面接
  8. 管財人による管財業務
  9. 債権者集会
  10. 免責審尋(ない場合もある)
  11. 免責許可の決定

弁護士に依頼するかどうかでもかかる期間が異なることがある

任意整理は,弁護士に依頼することなく進めることは難しいです。債権者と直接交渉することになりますので,専門家でなければ対等な交渉ができない場合がほとんどです。自分で交渉をしようとすると,上でご説明したような期間で任意整理を進めることは困難だといえるでしょう。

また,自己破産や個人再生についても,弁護士に依頼した方が短期間で手続きを終えることができるケースが多いです。それぞれの裁判所などやケースによって一概にはいえませんが,弁護士に依頼することで,個人再生委員の選任が不要になったり,管財事件になることを避けることができたりすることもあるのです。

債務整理は弁護士にご依頼ください

このように,債務整理には,ある程度の長い期間がかかることがあります。自分1人でその期間を乗り切るのは,非常に難しいですし,精神的にも負担が大きいです。
専門家である弁護士にご依頼いただくことで,スムーズに手続きを進めることができますので,債務整理を検討されている方はぜひ弁護士にご相談ください。